久しぶりに歯医者に行って、「歯周病なので通院が必要です」と言われたことはありませんか?
「むし歯になっていないか心配だからチェックしてほしかった」「硬いものを食べていたら歯が欠けたから治療を受けに行った」
どんな理由にせよ、「数回歯医者に通えば終わる」と思って気楽に訪れたのに、突然「歯周病」と診断されたら、驚きや困惑も当然ですよね。
「むし歯の治療なら削って、詰め物して終わりだけど、歯周病の治療ってなんだろう?大変そうだな…」「痛みは無いし、食事にも困ってなし、仕事が忙しいから通いたくない」そんなふうに思うかもしれません。
しかし歯周病は国民の80%が罹患してると示すデータが出ています。もはや「自分には関係ない」とは言えない疾患です。
しかも歯周病は自覚なく進行していく病気のため「サイレントキラー」と呼ばれることもあります。
日常生活に困ってきたときには、歯が揺れていたり、歯を抜くしかない状態だった。
そんな事例も珍しくありません。歯を長く健康に保つためには、早期の治療と予防がとても重要です。
この記事では、なぜ歯周病治療が必要なのか解説していきます。
歯周病とは
歯周病とは歯の表面に付いたプラーク(細菌の塊)や歯石が原因で、歯ぐきが腫れたり歯を支える骨が壊されていく病気です。

初めは歯ぐきが腫れる程度ですが、あごの骨を溶かして進行していきます。
やがて歯が揺れてきて、硬い物が食べにくくなり抜歯にいたることも。
しかも歯周病は痛みもなく静かに進行するため「困ってから歯医者へ行ったら、すでに歯を抜かなければいけない状態だった」ということも少なくありません。
放置する危険性
歯周病は歯の表面に汚れがついていれば、進行していきます。
また、口の中だけではなく全身の状態と関係していることが分かっています。
放置しておくと次のようなリクスがあります。
- 歯の寿命が縮む(気づいたときには抜歯が必要に)
- 糖尿病、脳卒中、心筋梗塞のような全身疾患が悪化する
- 強い口臭が発生する
歯周病は自然に治ることはありません。
歯科医師として毎日20人近くの患者さんと接している中で、実際に歯周病にかかっている人は半数以上にのぼります。
中には、「数年前に歯周病の治療を始めたけど、忙しくてやめてしまい、再来院したときには抜歯しかなかった」というケースも珍しくありません。
仕事が忙しかったり、家族の介護があったり、事情は人それぞれあるでしょう。ですが、歯周病に対して何の対策もせず、そのまま放置することが、歯を失う最大のリスクなのです。
どんな治療?
歯周病の治療には段階があります。
- 歯ブラシ指導
- 歯石取り
- 歯周病を悪化させる歯の根の病気やかぶせ物などの治療
- 歯ぐきや歯を支えている骨の手術
歯周病は歯1本単位の病気ではなく、お口の中全体で広がっていきます。そのため治療は広範囲で時間がかかります。
歯ブラシ指導(セルフケアの見直し)
「歯磨きなんて子供のころからしていて、いまさら指導なんて…」と思うかもしれません。
しかし歯周病の原因は細菌です。磨き残しがあれば歯周病は悪化していきます。
完璧な歯磨きができる人はいません。特に磨き残しやすい場所は
- 奥歯の頬側
- 下の歯の内側
- 歯並びの悪い部分
これらは誰でも汚れを残してしまう部分です。歯ブラシの訓練をせずに歯石だけとっても、また新しい汚れがついて歯石が沈着していきます
まずは、歯科医院で、自身の歯磨きの苦手な場所をチェックしてもらいましょう。
歯石取り(スケーリング・ルートプレーニング)
歯科医院で専用の器具を使って、沈着した歯石をとっていきます。

歯周病の主な原因はプラークと歯石です。
プラークをとることは歯磨きなので家でも可能ですが、歯石の除去は歯科医院でしかできません。
歯石は歯の頬側、内側、歯と歯の間とあらゆるところに付着しています。しかも目には見えない歯茎の中に隠れています。そんな歯石を1本ずつ手探りでとっていくため、歯石取りは時間がかかります。
歯石取りを受けている側からすると、実際歯石がとれているのかわかりにくいし、同じ治療が続くので通院するモチベーションが落ちてきますよね。
しかし、治療を中断すると歯周の原因である歯石が残り、病状は悪化していきます。
歯科医院に行くのが大変だからと、お店で売っている歯石をとる道具を使い自分で歯石をガリガリとるのはやめましょう。歯石だけではなく歯を削ってしまうことがあります。
本業である歯科医師や歯科衛生士でも歯石のとりには歯を傷つけないように慎重に行います。口の中という見えにくい場所を鏡で見ながら自分で行えば歯を削ってしまうかもしれません。
かぶせ物や根の治療
被せ物が合っていなかったり、歯の根に問題があると歯周病が悪化することがあります。
必要に応じてそれらの治療を行っていきます。
外科治療(フラップ手術・再生療法)
深いところに入り込んだ歯石を取りきるのは非常に困難です。4㎜以上の歯周ポケットがある場合は普通の歯石取りだけではきれいにできず、歯ぐきを開いて直接除去する外科的処置を行う必要があります。
ここまで行えば、歯石の取り残しはなく歯の表面はきれいになります。
また、再生治療という分野が活発になってきており、一部の骨の欠損であれば薬を入れて溶かされてしまった骨を回復することも可能になってきているので、担当医から提案された場合は、検討してみてください。
まとめ
この記事のポイントは以下の3つです。
- 歯周病は誰でもかかる病気で、国民の80%の人が歯周病になっている
- 歯周病は自覚なく進行するため、「症状から大丈夫」とはならない
- 治療を中断せずに通い続けることが大切
仕事や家庭の事情でこまめに通えない方も、まずは歯科医師にご相談ください。
ライフスタイルに合わせて、一緒に治療計画を立てていきましょう。
あなたの歯を守れるのは、あなただけです。
後悔しないために、今できることから始めてみませんか?

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