「歯がズキズキするけど、少し我慢すればそのうち治まるかな…」
そんなふうに感じて、歯の痛みを後回しにしていませんか?
実は、歯の痛みを放置するのはとても危険なこと。痛みの裏側には虫歯や歯周病、知覚過敏、親知らずなど、さまざまなトラブルが隠れていて、そのままにしておくと大がかりな治療が必要になったり、歯そのものを失うリスクにつながってしまうのです。
この記事では、歯科医師としての視点から「なぜ痛みを放置してはいけないのか」をわかりやすく解説します。さらに、原因別に考えられる症状や注意点、そして早めにできる対処のヒントもお伝えします。
なぜ歯の痛みを放置してはいけないのか?
一時的に痛みが弱まったとしても、自然に完治することはほとんどありません。むしろ「サインを見逃している」状態で、気づいたときには症状が進んでしまっているケースが多いです。
痛みを放置すると次のようなリスクがあります。
- 虫歯が進行して神経まで達し、抜髄(神経を取る治療)が必要になる
- 重症化してからの治療は通院回数も増え、費用も高額になる
- 神経を取った歯はもろくなり、将来的に寿命が短くなる可能性が高い
つまり、「ちょっと痛いけど大丈夫」と思っているうちに、歯を失う未来を近づけてしまうことがあるのです。
痛みの原因①:虫歯による痛み
最も多い原因が虫歯です。初期の虫歯は痛みがなく、進行してようやくしみたり痛んだりします。その時点で受診すれば治療は小さく済むのですが、「我慢できるから」と先延ばしにすると神経に達してしまい、抜髄が必要になります。
抜髄をした歯は、どうしても将来の寿命が短くなります。また、差し歯や被せ物などの追加費用もかかり、経済的にも大きな負担になります。
「痛みが出てきた=かなり進行している」と考えて、できるだけ早めに歯科を受診しましょう。
痛みの原因②:歯周病による痛み
歯周病は「歯ぐきの病気」と思われがちですが、実際には歯を支える骨まで溶かしてしまう病気です。進行すると歯ぐきが腫れたり、膿が出たりして痛みを伴います。
厄介なのは、虫歯と違って「痛みが出るころにはかなり進行している」という点。歯周病が原因の痛みを放置すると、歯を支える土台が弱り、最終的には歯を抜かざるを得なくなることも少なくありません。
歯ぐきから血が出る、口臭が強くなった、歯がグラグラする…こうしたサインを感じたら早めの検査が大切です。
痛みの原因③:知覚過敏による痛み
冷たいものや甘いものがしみるとき、それが「虫歯」ではなく「知覚過敏」であることもあります。知覚過敏は、歯ぐきが下がって歯の根元が露出したり、エナメル質がすり減ったりして起こります。
初期段階ならフッ素塗布やコーティング剤で症状を抑えられることが多いですが、放置すると「本当に虫歯になったのか、知覚過敏なのか」が区別できないほど症状が進むこともあります。
「ただの知覚過敏だろう」と自己判断せず、一度歯科で診てもらうことが安心につながります。
痛みの原因④:親知らずによる痛み
親知らずは真っすぐ生えてこないことが多く、歯ぐきの腫れや炎症を繰り返します。その結果、ズキズキとした痛みが出たり、口が開きにくくなることも。
親知らずは「必ず抜かなければいけない」わけではありませんが、位置や生え方によっては周囲の歯を巻き込んでトラブルを起こすこともあります。
特に、隣の歯との間に虫歯ができやすく、気づいたときには健康な歯まで治療が必要になることも。親知らずの痛みを感じたら、早めに歯科でレントゲンを撮って状態を確認することが大切です。
早めにできることとセルフケアの注意点
歯の痛みがあるとき、まず大切なのは「応急処置で終わらせない」ことです。市販の痛み止めでしのぐのは一時的な対策にすぎません。
ただし、受診までにできる工夫としては、
- 甘いものや冷たい飲み物を避ける
- よく噛む側を反対にする
- 丁寧に歯を磨いて清潔を保つ
といったことが挙げられます。
ただし、自己判断でネットに書いてある民間療法を試すのはおすすめできません。症状を悪化させるリスクがあるからです。
まとめ|「痛みはサイン」早めの受診が未来の歯を守る
歯の痛みは「何かがおかしい」という体からの大切なサインです。
- 虫歯は放置すると神経まで進み、歯の寿命を縮める
- 歯周病は気づいたときには進行していて、歯を失うリスクも高い
- 知覚過敏や親知らずも放置すると症状が悪化し、周囲の歯まで巻き込む
こうしたリスクを考えると、「ちょっと痛いけど我慢できるから大丈夫」と思って先延ばしにするのはとても危険です。
早めに受診すれば、治療も小さく済みますし、将来的な費用や負担も軽くなります。
「痛みがあるのに行けていない」という方は、まずは相談だけでも構いません。あなたの歯を守るために、勇気を出して歯科医院のドアを開けてみてください。
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